第16回:プレート法(3次元プレートモデル)

111弁当箱法

~それは代表的なポーションコントロール法、第二弾~

今回は、プレート法の中でも、より実践的な3次元(3D)プレートを用いた方法について解説したいと思います。

3Dプレート

2次元(2D)プレートモデルとの明らかな違いは、3Dプレート(図1)では、当然のこととしてプレートサイズが具体的に決まっていることが挙げられます。その外径は9-10 inch(22.9-25.4 cm)であることが多く、米国では一般的なディナープレートの直径が12 inch(30.5 cm)とされるため、小さめの皿として設定されているようです (1)。無地の皿では、そのサイズを小さくしても、エネルギー摂取量を制御できないことが報告されていますが (1)、食品群で分画されたデザインのプレートでは、皿のサイズによって摂取エネルギー量を調整することが可能になるようです (2, 3)。3Dプレートでは、「食品群の分割割合」と「プレートサイズ」の両方の機序でエネルギー摂取量を調整できるため、制御の精度が上がり、3Dプレートの中には、それを使った時のエネルギー摂取量の期待値が示されているものもあります(イギリスのThe Diet Plate (2)やオーストラリアのPortion Perfection Plate)。

3Dプレートでは、食品群の区画やガイド、計量目盛り等が印刷されていたり、あるいは3次元的な区画が施されています。スープやヨーグルト、シリアル等の液状あるいは流動性の食品用に、計量目盛り付きのボウルがセットになっているものもあります(図2)。3Dプレートでは、皿に記載された食品をその位置に載せることや、隣の食品群と積み重ねが生じないようにすることが指示されるのみで、非常にシンプルな食事療法が即時に実践できるのが特徴です。使用のタイミングは、一日の中で最も量が多い食事の際(夕食時等)に使うことが推奨されます。製品によっては、各食品群で推奨される食材や、各分画に載せる食材のサービングサイズ、混合食品の扱い等を記載した補足資料や栄養教育サポートが提供されるものもあります。

3Dプレートの亜型として、四角のトレイ型のものも市販されています(図3)。3~4分割でシンプルに分画されたものは皿型のものと同様の教育効果が得られると考えられますが、セクションが5つ以上に細かく分画されていたり、個々のセクションが複雑に分画されているデザインのトレイでは、1食の量調整にはなるものの、メッセージ性が薄れるため、もはや教育的効果は期待できないと考えられます。特に長期的に分量コントロールツールを成功させるためには、そのデザインに教育的な要素を含めることの重要性が強調されていますので (4)、トレイ型のものの選択には注意が必要です。

プレート法の日本での実践について

プレート法は非常にシンプルで有効な食事療法です。個別化した食事療法を行うための1つの選択肢として、知っておくべき方法と考えます。しかし、その利用には幾つかの注意点があります。その中でも、各国の文化や食事・食材事情に応じたバリエーションの問題は重要です。例えば、精製白米を主食とし、煮物や混合食品の多い日本では、欧米のプレート法をそのままの設定で使用できるのかが不明ですし、市販されている3Dプレートのサイズにしても、日本人にとって適切か否かは未だ検討されていません。現時点でプレート法を日本で実施する場合は、逆説的ですが、管理栄養士による個別指導によって、まず適切な食事をプレートに載せてみて、幾つかの典型例を利用者と一緒に確認して始めるのが良いのかもしれません。

111弁当箱法との併用は有望な選択肢

プレート法では皿を円グラフに見立てて、食品群をシンプルな比率で分画することに教育的意義があり (4)、この単純な分画によるメッセージ性は、私達の111弁当箱法(シリーズ第1回~3回を参照)にも共通します。プレート法では、エネルギー摂取量を削減することはできますが、個別の設定はできませんし、厳格にいえば日本の食材における適切な分割設定も不明です。一方、111弁当箱法では、日本の食材を使って個別にバランス良くエネルギー摂取量を設定できますが、弁当箱を使う機会は昼食時以外にはそう多くはありません。プレート法と111弁当箱法には、それぞれに利点と欠点があるため、食事の状況や食材に合わせて使い分ければ、それぞれの欠点を補完し、より柔軟なポーションコントロールが可能になると考えられます。どちらか一方というのではなく、併用という選択肢が正解なのかもしれません。

まとめ

プレート法は、2Dと3Dプレートのいずれでも、栄養バランスを是正し、体重減少効果や血糖改善効果等があることが示されています。日本の食習慣の中での効果はまだ不明ですが、大きなポテンシャルを持っていると考えられます。今後、日本でも活用されるようになることを期待しています。

引用文献

1.            Rolls BJ, Roe LS, Halverson KH, Meengs JS. Using a smaller plate did not reduce energy intake at meals. Appetite. 2007;49(3):652-60.

2.            Pedersen SD, Kang J, Kline GA. Portion control plate for weight loss in obese patients with type 2 diabetes mellitus: a controlled clinical trial. Arch Intern Med. 2007;167(12):1277-83.

3.            Almiron-Roig E, Domínguez A, Vaughan D, Solis-Trapala I, Jebb SA. Acceptability and potential effectiveness of commercial portion control tools amongst people with obesity. Br J Nutr. 2016;116(11):1974-83.

4.            Almiron-Roig E, Forde CG, Hollands GJ, Vargas M, Brunstrom JM. A review of evidence supporting current strategies, challenges, and opportunities to reduce portion sizes. Nutr Rev. 2020;78(2):91-114.

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