1:1:1お弁当箱栄養管理法(通常バージョン): 3. マイ・ポーションの設定、4. 自分用の弁当箱を使って食事を作る、5. お弁当を詰めた後、キッチン秤を使って重さで調整する

111弁当箱法

111弁当箱法は以下の5つのステップで行います。

  1. 目標体重を決める(詳細はここから)
  2. 1日の適正な摂取エネルギー量を見積もる(1食のエネルギー量を決める)(詳細はここから)
  3. マイ・ポーションの設定(自分用の弁当箱サイズと重さを決める)
  4. 自分用の弁当箱を使って食事を作る
  5. お弁当を詰めた後、キッチン秤を使って重さで調整する

 今回は、実際の科学的データを交えて、111弁当箱法の原理や優位点と合わせ、第3ステップの「マイ・ポーションの設定」、第4ステップの「自分用の弁当箱を使って食事を作る」、第5ステップの「お弁当を詰めた後、キッチン秤を使って重さで調整する」について説明します。原理とか細かいことは気にしないからとりあえず始めたいという人は、「3ステップ簡易バージョン」を見てください。

Ver.1.0:2023年9月23日投稿

第3ステップ「マイ・ポーションの設定」、第4ステップ「自分用の弁当箱を使って食事を作る」、第5ステップ「お弁当を詰めた後、キッチン秤を使って重さで調整する」

 マイ・ポーションの設定方法について、「1:1:1弁当箱法」の原理とそのデータを示しながら解説したいと思います。第3ステップから第5ステップまで一挙に説明します。

1:1:1弁当箱法と3・1・2弁当箱法の比較(図1)

 まず、「1:1:1弁当箱法」とその比較対象となる「3・1・2弁当箱法」の違いを見ていただきます。

 111弁当箱法では、弁当箱を3等分にして、主食(ご飯)と主菜(メインディッシュ:肉・魚料理)、副菜(サラダ等の野菜料理)を詰めます。3・1・2弁当箱法では、弁当箱を3:1:2に分けて主食、主菜、副菜を入れます(すなわち半分がご飯、残り半分の部分に1:2に分けて少ない方に主菜、多い方に副菜です)。弁当の詰め方の注意点は、両方とも同じで、①料理が動かないようにしっかりと詰めること、②同じ調理法のおかずが重ならないようにし、③特に油物は1品にすることです。

 「1:1:1弁当箱法」と「3・1・2弁当箱法」は、一見それ程大きな違いが無いように見えますが、これからデータで示しますように、この小さな違いが「1:1:1弁当箱法」に大きく優れた特徴をもたらします。

弁当箱容積(大きさ)とエネルギーの相関関係(図2)

 まず、多種類の大きさの弁当箱を使って、弁当箱の容量と食事のエネルギー量との関係を調べた検討を示します。

 赤色のものは、1:1:1弁当箱法(174食で検証)を使って関係をみたもの、黒色のものは、3・1・2弁当箱法(239食で検証)で作ったものです。容量(大きさ)とエネルギー量に相関関係が認められます。容量(大きさ)とエネルギー量との関係式(図の右に書いた回帰式)を用いて、指導エネルギー量に対応する弁当箱容量を設定できることがわかります。

 もっと簡単に換算するなら、400ml(cc)から900ml(cc)の間なら、下のカッコ内に示した簡易式を用いて、容量からエネルギー量を、逆にエネルギー量から必要とする弁当箱容量が簡単に算出できることが分かります。(簡易式は、1:1:1弁当箱法での回帰直線の近似式ですが、3・1・2弁当箱法でもほぼ同じになります。)

 ここで、もう一つ重要なポイントがあります。「3・1・2弁当箱法」のマニュアル本では、「1cc=1kcal」の関係があるとしていますが、その関係は、我々の検証の結果とはかなり大きなずれがあります。我々のデータも、彼らのデータも同様に正確であることに間違いはありません。ではなぜこのようなずれが生じるのでしょうか。これは、作り手や弁当箱への食材の詰め方(ギュウギュウに入れたりスカスカに入れたり)によって容量とエネルギー量との関係に大きなずれが生じることが原因です。このずれを補正する必要がありますが、その重要なキーポイントが次に示す「重量(重さ)」です。

弁当の重さとエネルギーの相関関係(図3)

 今度は、多種類の大きさの弁当箱を使って、作った弁当の重さと食事のエネルギー量との関係を調べています。

 赤色のものは、1:1:1弁当箱法(174食で検証)を使って関係をみたもの、黒色のものは、3・1・2弁当箱法(239食で検証)で作ったものです。どちらも、弁当内容の重さとエネルギー量に強い相関関係があることがわかります。また、重さとエネルギー量との関係式(図の右に書いた回帰式)を用いて、重さを合わせれば、指定エネルギー量の弁当に近づけることができるのがわかります。

 もっと簡単に換算するなら、150gから550gの間なら、下のカッコ内に示した簡易式を用いて、重さからエネルギー量を、逆にエネルギー量から必要とする弁当の重さが簡単に算出できることが分かります。(簡易式は、1:1:1弁当箱法での回帰直線の近似式ですが、3・1・2弁当箱法でもほぼ同じになります。)

弁当の食事エネルギー量を決める重要な要因は何か(表1) 

 それでは、弁当の食事エネルギー量を決める要因の中で、何が最も重要なのでしょうか。それを明らかにするため、弁当のエネルギーを決める要因とその占める割合について、重回帰分析を用いて検討しました。

 「脂質量」は、入れる油物(おかず)を1品に限定するルールに従って作った弁当で検討した範囲内のものと考えてください。この結果から、弁当箱の容量、重さ、弁当箱タイプ、脂質量の4つの要因で(モデル3)、食事エネルギー量を93%の確立で設定できることが分かります。また、容量(モデル1)や重量(モデル2)だけでも、食事エネルギー量をそれぞれ79.4%と87.0%の確立で設定できますが、重量(重さ)は容量(大きさ)よりも重要な食事エネルギー量の決定要因のようです。そして、容量と重さを合わせることで、更に正確なエネルギー量を設定できることが分かります。

 このことは、弁当を作る時の重要なポイントと考えています。まず、市販されている弁当箱にはそれほど多くの容量バリエーションは無く、容量だけで適切な弁当箱を提案しても、完全に一致する弁当箱を手に入れることは困難です。また、途中でポーションサイズを修正する必要が生じても、その度に弁当箱をいくつも買い換えることは現実的ではありません。初期設定した容量に近い弁当箱を準備し、その後に重量で調整すれば一つの弁当箱で無段階にポーションサイズを調整することができます。更に、弁当箱に食材を詰める時にも個人差があり、ギュウギュウに詰める人もいれば、余裕のある入れ方が好みの人もいますので、弁当箱の容積だけ決めても、エネルギー量に大きな差が生じやすくなります。重さで最終調節することは、容量だけで設定する他のポーションコントロール法(ワンプレート法や312弁当箱法等)よりも正確性を高めるために有効であり、111弁当箱法の重要な特徴の一つといえます。

111弁当箱法のもう一つの重要な特徴:適正な栄養組成率(図4)

 111弁当箱法のもう一つの重要な特徴である「適正な栄養組成率」について説明します。私達が食育や健康維持のための食事、あるいは生活習慣病の治療のための食事療法として、312弁当箱法ではなく、111弁当箱法を推奨する最も大きな理由がこの栄養組成にあります。

 近年の信頼できる疫学調査から、最も生命予後の良い炭水化物率は50~60%と認識されるようになっています。111弁当箱法ではその炭水化物率を達成できますが、3・1・2弁当箱法では、炭水化物率が60%を遙かに超えます。また、たんぱく質率についても、少なくなりすぎると筋肉量が減少し、基礎代謝量の低下から減量の停滞につながったり、高齢者ではフレイル・サルコペニアという要介護の原因となる病態につながりますが、その点でもたんぱく質率の高い111弁当箱法の方が健康食としても有利となります。逆に、たんぱく質率は高すぎても生命予後が悪くなったり、心臓病やがんの発症を高めることも知られていますが、111弁当箱法ではそこまでの極端な高たんぱく食にはならないこもこの検討で示されています。

弁当箱の容量(大きさ)と栄養組成率の関係(表2)

 更に、弁当箱の容量と栄養組成率の関係を検証しています。

 この検証から分かることは、3・1・2弁当箱では容積の変化によって栄養組成率が変化しやすいということです。大きな問題は、炭水化物率の変化です。元々ご飯の量の少ない111弁当箱では、弁当箱の容量が大きくなっても炭水化物率は変わりませんが、3・1・2弁当箱では、弁当箱の容量が大きくなると、量もそうですが、入れるおかずの量よりもご飯の量が増えてくるため炭水化物率が更に増加することが示されています。注意点として、弁当箱が大きくなればなるほど、111弁当箱も3・1・2弁当箱もたんぱく質率が低下することが示されています。おそらく、弁当箱法が大きくなると、肉や魚のおかずを沢山入れにくくなってくるためと考えられますので、大きな容量の弁当箱を使う場合は、意識して主菜(メインディッシュ)を多く入れるように注意する必要があります。

 まとめると、3・1・2弁当箱では大きい容量の弁当箱になればなるほど、脂質率は若干減少しますが、炭水化物率は脂質の2倍近く増加します。高炭水化物食の食習慣が長期に渡ると生命予後は悪くなり、腹部肥満や、糖尿病の発症を誘発したり、糖尿病の患者さんでは血糖状態の悪化をもたらすリスクがあります。一方、1:1:1弁当箱では容積によって、脂質・炭水化物率に変化が無く、容量に関わらず炭水化物率や脂質率が適正に維持できることが分かります。 

 私達が食育や健康維持のための食事あるいは生活習慣病の治療のための食事療法として、312弁当箱法ではなく、111弁当箱法を推奨する最も大きな理由が、こういった栄養組成の問題にあるのです(図4、表2)。

1:1:1弁当箱健康法手順(図5)

1:1:1弁当箱法の手順を図5にまとめます。

① 自分の目的とする体重を設定する(身長から自分の目的とする体重を設定するか、相談できるかかりつけ医やダイエットトレーナーがいるならその指導者と相談して体重を設定する)。設定方法の詳細はこちらから。

② 目標とする1食のエネルギー量を設定する。設定方法の詳細はこちらから。

③ 「準備する弁当箱の容量=目標食事エネルギー量÷0.7」の式から、自分に適した容量(マイ・ポーション)に近い弁当箱を用意する。

④ 主食(ご飯):主菜(メインディッシュ):副菜(野菜、サラダ)が3等分になるように弁当を作る。

⑤ ステップ③④だけだとギュウギュウに詰めすぎていたり、逆にスカスカになったりするので、最後にキッチン秤を使って、目標とする重さになるように主食やおかずの量を増やしたり減らしたりして最終調節します。作った弁当の重さを計って、「適切な弁当の重さ=目標食事エネルギー量÷1.4」の式から計算される重さになるように調節します(風袋:弁当箱の重さを引くことを忘れずに)。減らす時はご飯や油物から、増やす時は副菜、主菜の順で調節すると、よりバランスが良くなります。毎回重さを計るのは面倒くさいと思います。今までの経験から、多くの人は、実際に重さで調整するのは最初の3~4回くらいで、数回作ればキッチン秤無しでもほぼ同じ重量でお弁当を詰めることができるようになるようです。そのため、最終的にはステップ④までで弁当が作れるようになります。しかし、日が経つにつれて感覚がずれてくることがありますので、適切なお弁当を作れているかを確認するために、時々重さでチェックして下さい。

最後に:食べる

 最後に、食べ方も重要です。この方法で作った適正な栄養組成とエネルギー量を備えた1食を食べるということは大切です。しかし、毎回この方法の食事しか食べられないというと飽きてしまいますし、何よりストレスが大きくなり、多くの人は継続できないと思います。

 重要なのは、この方法を使って作った食事を、実際に目にして手に取ってサイズと重さを感じることです。そして、これが自分の適切な一食分(マイ・ポーション)であり、ご飯とおかず(主菜、副菜)の適切なバランスであるということを感じて欲しいのです。Don’t think feel(考えるな、感じろ)です。アメリカ人の一食(個人ポーションサイズ)が大きくなったのは、商業的販売戦略でレストランや市販食材の一人分(商業ポーションサイズ)がどんどん大きくなっていったからだと言われています。大食漢の家族(特に両親)がいる環境で育った子供の食事量が多いことも知られています。運動部員が部をやめた後も食事量が変わらず、どんどん太っていくということもよくあるエピソードです。こういった事実から、ポーションサイズに対する環境や学習の影響は大きいと考えられています。何回か定期的に弁当箱法を使っていくことで、自分のポーションサイズを認識して適切なものにリセットしていくことがこの方法の最も大きな目的です。

 もちろん、一日の食事の中の一食(昼食)を弁当として置き換えたり、数日に一回でも最も多くなる食事(夕食等)をこの方法の食事に置き換えて、制限食として使うことも可能です。まずは、何度か使ってみてください。この方法で、自分の食行動に何か変化が生まれるかもしれません。

補足

 ここで提案する自分用の弁当箱サイズと重さは、初期設定であって絶対的なものではありません。適宜あるいは段階的に調整が必要となる場合があります。減量効果がなければ弁当箱を1サイズ小さくするか、同じ弁当箱を使う場合は重さを減らすことで調節してみてください。

 簡易バージョンの解説も合わせて見て頂き、自分にあう方法を試してみてください(3ステップ簡易バージョン)。

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