111弁当箱法と基礎カーボカウント

111弁当箱法

111弁当箱法では、炭水化物率が総エネルギー量の50-60%(%E)に固定されています。そのため、炭水化物管理を中心に据えた血糖管理法であるカーボカウントへの応用が期待できます。今回は、カーボカウントとの相性について説明します。(2025年4月29日記載)

はじめに

代表的なポーションコントロールツールであるプレート法では、エネルギー量を制限する機序として、2つの方法がとられています。1つ目は、日常生活で使っているプレートよりも小さいサイズのプレートを使い、1食量(ポーションサイズ)を物理的に減らす方法です。これは、個別に適切なエネルギー量を設定しているのではなく、今までの食事から少しでも不定量を減らすことを目的としています。2つ目は、プレートに盛る食材を区画して、エネルギー密度の高い炭水化物食材(穀物やデンプン質野菜)やたんぱく質食材を減らし、エネルギー密度の低い非デンプン質野菜を増やす機序です。このため、通常のポーションコントロール法(プレート法)では、栄養組成率は固定されておらず、エネルギー量の変動も大きくなることから、ダイエット用としては有用でも、栄養素に注目した応用的使用には適していません。一方、111弁当箱健康法では、栄養組成率が一定のまま、エネルギー量を個別に設定できるため、たんぱく質量や炭水化物量を固定することができ、それを基に、エネルギー制限食以外の応用的な利用が可能となります。たんぱく質との関係については「111弁当箱法とたんぱく質摂取」の回で説明しましたが、今回は炭水化物に注目し、カーボカウントへの応用について説明したいと思います。

基礎カーボカウントとしての使用

111弁当箱法では特に炭水化物率がほぼ一定になるため、カーボカウントという血糖管理法と相性が良いと考えられます。

カーボカウントには、基礎カーボカウントと応用カーボカウントがあります。応用カーボカウントはインスリン調節法であり、特に1型糖尿病患者で行われます。インスリン1単位が下げることができる血糖値(効果値という)と、炭水化物1カーボ(=炭水化物10g)の摂取後に上昇する血糖値を元の血糖値に低下させるのに必要なインスリン量(インスリン/カーボ比)を基に、食事前に投与するボーラス・インスリン量を調節します。しかし、これを行うには、これから摂取する食事に含まれる炭水化物(糖質)量を見積もる必要があります。基礎カーボカウントとは、応用カーボカウントのために食事の炭水化物(糖質)量を見積もるための方法であり、更に、適正な炭水化物摂取と、それを中心に栄養バランスの良い食事を実践するための食事療法かつ栄養教育のことです。基礎カーボカウントは、1型糖尿病だけでなく全ての糖尿病患者が対象となります。炭水化物を中心に食事を組み立てるというと、多くの方は低炭水化物食(炭水化物率40%E未満の食事)を思い浮かべますが、基礎カーボカウントでは、あくまでも適正な炭水化物率(日本では50-60%E)をもつバランスの良い食事を指導します。

111弁当箱法では、炭水化物率が57.5±7.9%E(1)となりますので、一食のエネルギー量を設定したら、その炭水化物量(g)はエネルギー量(kcal)×0.575÷4で見積もることができます。1カーボの定義は国や施設によって違うことがあるので注意が必要です。米国では1カーボは炭水化物15g、イギリスやドイツでは10gとなっています。日本では施設によって定義が違い、大阪公立大学病院では1カーボ=炭水化物10gとしています(2)。表に簡易の見積もり表を示します。111弁当箱法は、目標とする炭水化物量を中心に、バランスの良い食事を自身で作ることができるので、食後血糖の安定化につながります。また、効果値やインスリン/カーボ比は、その時の体調や病態等によって変動しますが、日常食の炭水化物(糖質)含量が分かる111弁当箱法を使えば、体調の変化に合わせて、現行の効果値やインスリン/カーボ比の適正を評価し、修正を行うことができます。

まとめ

111弁当箱法では、栄養素に注目した応用的な使用方法があることも、他のポーションコントロールツールとは違う特徴と言えます。

参考文献

(1)藤本浩毅, 福本真也等. エネルギーコントロール食を実践するための新たな食事療法用デバイスについての予備検討:111 弁当箱法. 糖尿病 2010;53(9):706-712.

(2)大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学, 大阪市立大学医学部附属病院栄養部他編. さらにかんたん!カーボカウント. 東京, クリニコ出版, 2019.

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