~妊婦と111弁当箱法、海外編~
妊娠中の食事療法としてのポーションコントロール法について3回シリーズで解説しています。初回は基礎編を、前回は実践編として111弁当箱健康法のメリットと実践方法について解説しました。最後は海外編として、米国での妊婦に対するプレート法の実施状況を紹介したいと思います。
米国での妊婦に対するポーションコントロール法
米国では妊婦のほぼ半数が妊娠前に過体重または肥満であるため (1)、妊娠中の体重増加の適切な管理が重要な課題とされています。そして、米国科学アカデミーによる食事摂取基準は、肥満度が高いほど、妊娠中の追加摂取量を厳格に抑える必要があることを示しています (2)。
妊娠を維持するためには、母体と胎児による代謝(エネルギー消費)の増加だけでなく、胎児や胎盤組織等の成長・増大によるエネルギー蓄積を考慮して、妊娠第2期(中期)以降で摂取エネルギー量の付加が必要となります (2)。妊婦にとって食事コントロールが難しいのは、妊娠期に応じてエネルギー必要量が変化することがその重要な要因となっており、過不足無くその変化に対応するには、調整が簡単で分かり易い食事計画が必要です。
妊婦用ポーションコントロールによる分割食では、表1に示すように、朝昼夕の主となる食事をプレート法で行い、妊娠期に応じた付加エネルギー量 (2, 3)を間食で調整するといった方法がとられます。プレート法では、厳格なエネルギー量の調節が必要な場合には、プレートサイズを指定したり、1食分の各種食材(野菜・果物/穀物/たんぱく質)をサービングサイズで示すことで、より正確で明確な食事計画を提案することが可能となります(表1)。また、間食は、付加エネルギー量の調整だけでなく、食後血糖の上昇を抑制するための主要食からの炭水化物の分割や、増大する子宮による胃への圧迫等で一回の食事量が減ることへの対策としても、有効な調整役を担っています。更に、プレート法を用いて具体的な食材例を示すことは、妊婦が摂るべきでない食材を避け、積極的に摂るべき食材へ誘導することにもつながります。

このように、欧米では、妊婦におけるポーションコントロールは、単なる減量法ではなく、「母体の過度な体重増加の抑制」と「妊娠糖尿病の予防・管理」を目的とした、極めて標準的な食事管理法として行われています。妊婦用ポーションコントロールとしてのプレート法には幾つかの方法がありますので、健康な妊婦に対するものと、より厳格な管理が必要な糖代謝異常妊婦に対するものに分けて、その特徴を紹介します。
健康な妊婦に対するプレート法
健康な妊婦に対する食事療法について、米国産科婦人科学会(ACOG)はそのHP上 (4)で、妊娠中の健康的な食事を計画するのに最も便利なツールの1つとしてハーバード大学のHealthy Eating Plate (5)(図1)を挙げています。Healthy Eating Plateによる管理では、厳格な食事量の管理はなく、適切な食材の選択と、間食による付加エネルギー量の調整が主体になります。厳格な管理を必要としない健康な妊婦のための食事療法であり、最も負担の少ない方法と言えます。

オレゴン健康科学大学のMy Pregnancy Plate (6)(図2)は、ハーバード大学のHealthy Eating Plateに近く、個々の食材量については厳密には示されていませんが、付加エネルギー量は妊娠第2期から+300 kcal/日とし、その具体的な量として、「全粒粉パン1枚+ピーナッツバター大さじ1杯+中サイズのリンゴ一個の1セット」や「カットメロン1カップ+アーモンド12個+低脂肪ヨーグルト6オンスの2セット分」といった間食を提案し、推奨される妊娠中の体重増加量に照らして、食事量を調節するよう示されています。

米国北西部の医療保険組織によるHealthy Pregnancy Plate (7)(図3)では、9 inchプレートを用いて、1/2が野菜とフルーツ、1/4が穀物とデンプン質野菜、1/4がたんぱく質とすることが示されており、一般的な3Dプレート法 (8)と同様です。しかし、特徴的なのは、妊娠前の基本的な摂取エネルギー量を1600~2000kcal/日として、それを達成するための各食材量を、1日に摂取すべきサービング数(果物と野菜は6サービング以上、たんぱく質は7-11サービング、穀物とデンプン質は5-8サービング)で示しており、それを3回の食事と2~3回の間食で分割するようになっていることです。また、各種食材の1サービングがどれくらいの量であるかの目安も紹介されています。妊娠第2期(中期)から第3期(後期)にかけて、1日あたりのカロリー必要量が200~300 kcal増加することや、その具体例も示されています。より厳格な管理が必要な妊婦にも対応可能なプレート法と考えられます。

糖代謝異常妊婦に対するプレート法
米国糖尿病学会(ADA)は、妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠に対し、最初に考慮すべき手軽な食事療法として、9 inchプレートを用いた糖尿病プレート法を提案しています (9)(図4)。

妊婦中の血糖管理目標は非妊娠時よりも厳格であるため、炭水化物摂取の管理は糖尿病妊婦にとって重要な課題です (10)。そのため、糖尿病プレート法では、特に炭水化物量の調整を中心に食事計画を立てます。そしてその特徴は、通常のプレート法では皿の半分に野菜と果物が配置されるのに対し、糖尿病プレート法では、果物が炭水化物分画(皿の1/4)に配置されていることにも現れています(図5)。また、食後高血糖を避けるため、1日に必要な炭水化物量を主要食と間食で分割摂取するように食事計画が作成されます。ただし、炭水化物は、過剰摂取を避ける必要がある一方で、最低175g/日以上は必要とされ、炭水化物量を極端に減らした低炭水化物食は推奨されていません (10)。インスリン治療中の妊婦では、食後高血糖や低血糖リスクを最小限に抑えるため、食前施注のインスリン量に合わせて炭水化物を定量摂取するか、あるいは、摂取する炭水化物量に合わせてカーボカウント法でインスリン投与量を調整する方法がとられます。いずれにしても炭水化物摂取量を意識した食事計画がなされます。

妊娠期に応じて付加エネルギー量の調整が必要となるため、それぞれの妊娠期に食事計画の見直しが必要となります (11)。表2に妊娠第2期(中期)に1日2,400 kcalを摂取する糖尿病妊婦の食事計画例を示します。糖尿病プレート法による食事計画では、登録栄養士(RD/RDN)の下で個別の食事プランが作成され(表2左)、それに応じた具体的なサンプルメニューが提案されます(表2右)。

最後に
欧米では、一般的な食事療法としてのみではなく、妊婦用としてもプレート法が多用されています。しかし、今年1月にアメリカ農務省(USDA)が新たな食事ガイドラインを発表し、ガイドラインとしてのプレート法(MyPlate)の採用が無くなりました(次回にこのガイドライン変更について解説します)。この方針転換によってプレート法の有効性が否定された訳ではありませんし、世界中で行われているプレート法を中心としたポーションコントロール法が無くなるわけでもありません。しかし、1つの情報源が減ることは、それを必要とする人にとって少なからず痛手となります。我々は、ポーションコントロール法を必要とする人たちのために、これからも広く情報を発信していきたいと考えています。
引用文献
1. Deputy NP, Dub B, Sharma AJ. Prevalence and Trends in Prepregnancy Normal Weight – 48 States, New York City, and District of Columbia, 2011-2015. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2018;66(51-52):1402-7.
2. National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. 2023. Dietary Reference Intakes for Energy. Chapter: 7 Applications of the Dietary Reference Intakes for Energy. Washington, DC: The National Academies Press.
3. Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes for Energy, Carbohydrate, Fiber, Fat, Fatty Acids, Cholesterol, Protein, and Amino Acids. Washington, DC: The National Academies Press; 2005.
4. Every stage health from the American College of Obsericians and Gynecologists. FAQs of Healthy Eating During Pregnancy. (https://www.acog.org/womens-health/faqs/healthy-eating-during-pregnancy)2026年3月閲覧.
5. Healthy Eating Plate. Harverd T.H. Chan School of publlic health.(https://nutritionsource.hsph.harvard.edu/healthy-eating-plate/)2026年5月閲覧.
6. My Pregnancy Plate. Oregon Health & Science University. (https://www.wicstrong.com/wp-content/uploads/2023/01/My-Pregnancy-Plate_English.pdf)2026年5月閲覧.
7. Healthy Pregnancy Plate. Kaiser Foundation Health Plan of the Northwest.(https://healthy.kaiserpermanente.org/content/dam/kporg/final/documents/health-education-materials/instructions/healthy-pregnancy-plate-hi-en.pdf) 2026年5月閲覧.
8. 福本真也. 患者に伝わるポーションコントロール 1:1:1弁当箱栄養管理法のススメ(第9回) プレート法によるポーションコントロール(3次元プレートモデル). Nutrition Care. 2026;19(1):64-7.
9. Using the Diabetes Plate with Gestational Diabetes and After Delivery. American Diabetes Association. (https://diabetes.org/sites/default/files/2024-10/Diabetes-Plate-Using-with-GDM-FINAL_0.pdf) 2026年5月閲覧.
10. 15. Management of Diabetes in Pregnancy: Standards of Care in Diabetes-2026. Diabetes Care. 2026;49(Supplement_1):S321-s38.
11. Sample Meal Plan and Menu Ideas for Gestational Diabetes (GDM) and After Delivery. American Diabetes Association. (https://diabetes.org/sites/default/files/2024-10/Sample-Meal-Plan-for-GDM-FINAL.pdf)2026年5月閲覧.

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