1:1:1お弁当箱栄養管理法(通常バージョン): 2.適正な摂取エネルギー量を見積もる

111弁当箱法

111弁当箱法は以下の5つのステップで行います。

  1. 目標体重を決める
  2. 1日の適正な摂取エネルギー量を見積もる(1食のエネルギー量を決める)
  3. マイ・ポーションの設定(自分用の弁当箱サイズと重さを決める)
  4. 自分用の弁当箱を使って食事を作る
  5. お弁当を詰めた後、キッチン秤を使って重さで調整する

 第2ステップでは、最初に設定した目標体重を達成するためのエネルギー摂取量を見積もる必要があります。今回は、「2. 1日の適正な摂取エネルギー量を見積もる」について、その原理と方法を説明します。 原理とか細かいことは気にしないからとりあえず始めたいという人は、「3ステップ簡易バージョン」を見てください。

Ver.1.0:2023年8月23日投稿

目標体重の設定

 目標体重の設定についての解説は「1:1:1お弁当箱栄養管理法(通常バージョン): 1.目標体重の設定」を参照してください。ここでは、結論だけ示します。18歳~65歳未満では、目標体重を身長(m)×身長(m)×22で計算します。(目標体重設定についての詳細説明はこちら

1日の食事エネルギー量の目安

 欧米のダイエット法では、個人の体格にかかわらず一律に「現在の食事エネルギー量から〇〇kcal減らす」という方法が用いられますが、日本の食事療法では、個別に適切な食事(摂取)エネルギー量を設定する方法が用いられることが多いです。どちらの方法にも一長一短があり、一概にどちらが良いとは言えませんが、111弁当箱法では、「個別に適切な食事(摂取)エネルギー量を設定する方法」で行いますので、その設定方法について説明します。

 1日の消費エネルギー量は、身体活動レベルに合わせた「エネルギー係数」(資料2)を用いて、「体重×エネルギー係数」の計算式で近似して見積もることができます。人が消費するエネルギー量は、①基礎代謝量(生きているだけで消費するエネルギー:60%)と②食事誘発性熱産生量(食事で取り込まれた栄養素が分解される際に消費するエネルギー:10%)、③身体活動と運動で消費するエネルギー(30%)の3つを合わせたものですが、この消費エネルギー量と食事による摂取エネルギー量が同じであれば、理論的には体重は変化なく維持されることになります。一方、摂取エネルギー量が消費エネルギー量よりも少なければ体重は減ります。

 消費エネルギー量の6割を占める基礎代謝量は体重に比例することが知られています。また、運動で消費されるエネルギー量も、体格×運動強度(運動の強さ)×運動時間で決まるため、同じ運動・活動をしても、消費されるエネルギー量は体重に比例して増減します。すなわち、肥満体重を維持するのに必要なエネルギー量と、減量後の体重を維持するためのエネルギー量では、後者の方が少ないはずです。そこで、目標体重における消費エネルギー量と同じ量を、食事(摂取)エネルギー量に設定することで、目標体重まで体重が減り、その後も目標体重で維持されるというのが、この食事(摂取)エネルギー量設定の原理です。ちなみに、食事誘発性熱産生量も、ダイエットによる食事量の減少に伴って減りますので、そのことも考慮して摂取エネルギー量の設定は若干少な目にしておく必要があります。

 余暇に行うスポーツ(野球やテニス、水泳、ジョギング等)によるエネルギー消費については、ダイエットで考慮する場合は、よほど本格的にスポーツを行っているアスリートでなければ、スポーツによって消費されるエネルギー量はほぼ無いに等しいと考えた方が良い結果を生みます。理由としては、運動後の達成感や疲労感に比べて、その運動で消費できるエネルギー量は極端に少ないことが多く、例えば、30分間のランニングをした後にコンビニの卵サンドを1つ食べるだけで、逆にカロリーオーバーになってしまいます。また、運動後の空腹感や、運動をした満足感がその後の過食への免罪符になるケースも多々あります。しかし、ダイエットにおいてスポーツ・運動が重要であることに間違いはありません。食事療法のみによる減量では、筋肉が減少して基礎代謝量が低下し、時間とともに減量効果が薄れていきますが、運動療法を同時に行うことでそれを抑制し、食事療法による減量効果を維持することができます。また、運動療法は、心肺機能を鍛え、精神的にもリフレッシュでき、ダイエットに重要な生活リズムも整えてくれます。このように、減量時に運動療法を併用することは重要ですが、スポーツによるエネルギー消費を過度に期待することは、ダイエットを失敗させる原因になるため注意が必要です。

1日の食事エネルギー量の設定例

 1日の食事エネルギー量の設定例を示します。Aさんの身長は1.68mですので、資料1から目標体重を設定して、身長×身長×22で62kgとなります。活動レベルは資料2から軽労作ですので、エネルギー係数を25~30となり、1日摂取エネルギー量は、目標体重×エネルギー係数となるので、1550~1860kcal/日となります。1550から1860kcalまで幅がありますが、細かい端数は意味が無いため、初期設定としては、真ん中の1700kcalにしても良いですし、少なめにしたければ1600kcal、多めで始めるなら1800kcalでも良いです。また、軽労作の中でも更に実際の自分の活動の強弱に合わせて調節しても良いです。とにかく、これは単に初期設定であって、絶対的なものではなく、体重減少効果や自分が実行可能かどうかを定期的に評価して段階的に調整すれば良いのです。

(注:日本では80kalを1単位として食品交換表を使った食事療法が行われます。そのため、医療機関で設定される場合は80の倍数となります。例:1600、1680、1760、1840kcal)

目標体重・1日食事エネルギー量 早見表(簡易版)

 先ほどの計算が面倒くさい人には、身長から設定する簡易版早見表を用意しました。この早見表では、生活強度を「軽い労作」で設定しています。表中の「食事エネルギー量」の欄に書いているカッコ内のエネルギー量は、実際の生活活動量によって微調整するために示しています。また、「目標体重」と「食事エネルギー量」は、初期設定値であり、絶対的なものではありません。食事療法開始後にその効果をみて、100kcal前後で適宜増減しながら調節して下さい。例えば、身長が166cmなら、165と170cmの間なので、目標体重をその間の60kgと決め、1日食事エネルギー量を1800kcalと決めます。もちろんカッコ内の範囲で、実際の活動量に応じて1500~2100kcalの間で初期設定してもかまいません。例えば1800kcalで初期設定した場合、その後に体重減少効果がなければ、適宜あるいは段階的に1700kcalや1600kcalへと減量し、食事エネルギー量を調整していきます。食事エネルギー量の設定が適正かどうかを評価する際には、食事以外でエネルギー摂取(お菓子やジュース等)が増えていないかどうかを確認することも大切です。

1食の食事エネルギー量の設定

 最後に、1食の食事エネルギー量の設定です。ここでは、1日3食を基本食事回数として設定し、1食のエネルギー量は、1日摂取エネルギー量の30%か1/3(33%)のどちらか近い方で設定します。どちらか迷う場合は、昼食用なら1/3、夕食用なら30%に近い量にすると良いです。それでも迷う場合、例えば1日食事エネルギー量を1600kcalと設定すると、その30%は480kcal、3分の1とすると533.3kcalとなりますが、細かい数値にはあまり意味が無いため、「500kcal前後」と中間の切りが良いところで設定します。

 1日の食事回数が少ない人(1日1食~2食の方)の場合:1日の適切な食事回数については、明確なエビデンスは無く、現時点では不明です。1日1食か2食しか食べないことで、1日のエネルギー摂取量が減ってダイエットにつながることもありますが、多くの場合、1食分の食事量が多くなることで、食後血糖の上昇やインスリンの過剰分泌につながり、ダイエット効果が得にくくなります。また、食間の長時間絶食によって引き起こされた遊離脂肪酸の血中濃度上昇がインスリン抵抗性をきたして、更にインスリン分泌の亢進と食後血糖の上昇を助長します。そのことは、体重の減量に不利になるばかりか、特に糖尿病患者であった場合は、血糖状態の悪化につながるため、推奨はできません。また、食事回数が少ない人は、食事以外の間食(デザート、お菓子、果物、ジュース)が多くなる傾向があるため、トータルとしてエネルギー過多となり、ダイエットの失敗につながります。

 一方、1回分の食事量を極端に少なくして食事回数を増やす「頻回分割食」で血糖やインスリン分泌の上昇を減らし、ダイエットにつなげる方法もありますが、厳格に管理されていないと、1日摂取エネルギー量を小分けにする「分割食」ではなく、単に通常食の回数が多いだけの「追加食・多食」となり、逆にリバウンドして体重増加となってしまうケースが多いのが問題です。

 上記の理由により、「111弁当箱法」では、1日の基本的な食事回数を3回として、適正な1食量であるマイ・ポーションを設定しています。

減量の目的別のエネルギー設定の違い

1)ポーションコントロール/ポーショントレーニングを目的とした場合:通常の方法

 111弁当箱法による減量では、自分の本来の食事量(マイ・ポーション)を確認して実践し、正しい食事量の認識修正をしていくこと(ポーションコントロールおよびポーショントレーニング)が目的ですので、上記に示したような方法で、自分の目標体重を達成し維持するための摂取エネルギー量を設定します。

2)もっと積極的な食事制限法として、低カロリー食への置き換えを目的としている場合

 111弁当箱法の本来の目的は、マイ・ポーションの認識修正とポーションコントロールが目的ですので、目標体重を基に設定したポーションコントロールをお勧めしています。しかし、基礎代謝量が少ない等の体質のために、正しく設定された食事量(マイ・ポーション)であっても、肥満が改善しない人もいます。そういった難治性肥満の場合、摂取エネルギー量の設定時の生活強度を一段低くしたり、実際の生活強度に関わらず肥満(25≦BMI<35)では25kcal×目標体重(kg)以下、高度肥満(BMI≧35)では20~25kcal×目標体重(kg)以下を目安に摂取エネルギー量をより少なく設定することも可能です。(肥満と高度肥満の説明はこちら

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