~妊婦と111弁当箱法、実践編~
妊娠中の食事療法としてのポーションコントロール法について3回に分けて解説しています。今回は実践編ということで、111弁当箱法を妊婦に用いるメリットと実施方法について解説したいと思います。
111弁当箱法のメリット
111弁当箱法は非常にシンプルな食事療法で、①マイ・ポーション(適切な弁当箱サイズと食事の重さ)を設定し、②弁当箱を3等分して主食、主菜、副菜を詰め、③キッチン秤を使って全体量を最終調整するというスリーステップによって、適正に個別化された食事を作ることができます (1, 2)。この111弁当箱法を妊婦に用いる主なメリットとして、i) 妊娠中のエネルギー付加量の変化に迅速に対応しやすいこと、ii) 妊婦にとって適切な炭水化物率(50-60%E)を維持できること (3)、iii) 食品交換表を用いた食事療法だけでなく基礎カーボカウント法にも対応できること (4)、iv) 分割食が実施しやすいこと、の4点が挙げられます。
前回で解説したように、妊婦では妊娠期に応じてエネルギー付加量が変わり、母児の状態に応じてもエネルギー量を迅速に調整する必要があります。短期間での食事の変更・修正は、妊婦の負担になりますが、111弁当箱法では、使用する弁当箱の容量や食事重量を修正するだけで簡単で迅速な対応が可能です (1, 2)。また、111弁当箱法では、炭水化物率を50-60%Eに維持したままエネルギー量を調整できる特徴があり、それらの設定条件を基に炭水化物量を簡単に計算できるため、カーボカウント法で治療中の妊婦にも対応が可能です(Table 1)。また、妊娠中によく行われる分割食は、十分に管理しないと追加食となってしまい、むしろエネルギー摂取過多を招いてしまうことが懸念されますが、111弁当箱法では弁当箱中の一定量の食事から次の間食用に食品を分割して残すため、過剰摂取にはつながりません。更に、111弁当箱法は、過剰な食事摂取を抑制するのみならず、逆にエネルギー摂取量が不足している妊婦に対しても、適切なエネルギー量を測る物差しとして使うこともできます (4)。このように、妊娠中の食事療法として、111弁当箱法には多くのメリットがあります。本稿では、過去の連載回で説明していない分割食への応用について、更に詳しく説明したいと思います。

分割食の設定
妊娠中に特徴的な食事療法に分割食があります。主要な3食(朝食、昼食、夕食)を適切に摂取していても、食後の高血糖をコントロールし難い場合に、1日5~6回の食事(朝食、間食①、昼食、間食②、夕食、間食③)に分割することで食後の血糖上昇を抑制し、インスリン療法中の患者においては、追加インスリン量の減量による血糖状態の安定化と低血糖リスクの低減を目的に行われます。しかし、頻回の食事は総エネルギー摂取量の増加につながりやすく、十分な管理の下で行う必要があります。
「食品交換表」を用いた食事療法における分割食では、まず各妊娠期の付加エネルギー量を加えた1日分の食事を計画し、その食品構成から、例えば「朝間食として表1から1単位、昼間食(おやつ)として表1から0.5単位と表4から1単位、夜間食(夜食)として表1から1単位」のように分割食を設定し、それら分割食分を差し引いて主要3食を構成するといった方法がとられます (5)。間食は主に「食品交換表」の表1、表2、表4の食品から選び、生活様式にあわせて、おにぎりや果物、牛乳、ヨーグルト、クッキー等、スナックとして摂取することができます。1回の間食量の目安は一日摂取エネルギー量の5-10%、または1~2単位程度(80~160 kcal)とすることが提案されていますが (5)、血糖状態をみて個別に調整します。
カーボカウントの場合、1回の間食の目安は、炭水化物量(糖質量)を主要食の半分程度とするか、1.0~2.0カーボ(炭水化物10g=1カーボと定義)とすることが多いですが、これも個別の調整が必要です。1日の炭水化物摂取量(g)は 1日摂取エネルギー量(kcal)×炭水化物率(%)÷4(kcal)で見積もられ、例えば、目標摂取エネルギー量が1600 kcalで炭水化物率50%とすると、1日炭水化物量は計200g(20カーボ)となり、朝食4.5カーボ、朝間食2カーボ、昼食4.5カーボ、おやつ2カーボ、夕食5カーボ、夜食2カーボのように分割します。
いずれの方法にしても、食事と間食の量調節は比較的複雑であり、食事療法に慣れていない妊婦にとっては大きな負担になる可能性があります。
111弁当箱法を用いた分割食
「食品交換表」を用いた方法や基礎カーボカウント法のどちらをベースにしていても、111弁当箱法を用いれば、簡単に分割食を実践できます。一日の摂取エネルギー量を3等分した食事を111弁当箱法で作り、その弁当食の主食(ご飯)部分を、1/3~1/2量残して、残したご飯を2~3時間後に間食として食べるだけで、適正な分割食となります。主食1/3量なら表1の食品1単位前後あるいは糖質1.5-2.0カーボの、主食1/2量なら表1の食品1.5単位前後あるいは糖質2.5-3.0カーボ相当の分割食になります(Table 2)。更に、残す主食分を別にとっておき、代わりにそれに相当するエネルギー量あるいは糖質量のスナック(果物、ミニパック牛乳、クッキー等)に交換することもできます。Fig.1に890mlの弁当箱を使って作った食事での分割食の例を示します。使う弁当箱の容量によって、視覚的分割分(1/3~1/2量)のエネルギー量や糖質量は変化するので(Table 2)、分割したい量を、予め重量を測定するなどして確認しておくのも良いかもしれません。その場合、白米や玄米は、両者とも1単位(80 kcal)=約50g、1カーボ(糖質10g)=約30gが目安となります(文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より計算)。


最後に
弁当箱やタッパを使った分割食は、日本では古くから糖代謝異常妊婦に対する食事療法として行われてきましたが、具体的で明確な指標が無く、経験的に行われてきた経緯があります。現在では、生活様式の変化等もあり、使われることが少なくなっていますが、今回、111弁当箱法のメリットや具体的指標を反映した方法として、そして、間食に果物、ミニパック牛乳、クッキー等を使う「ミール&スナック」に対応可能な新しい方法として紹介しました。次回は、海外で行われている妊婦向けポーションコントロール法を紹介します。
引用文献
1. 福本真也.はじめての1:1:1 弁当箱栄養管理法(111 弁当箱健康法).ニュートリションケア.18(5),2025,472-5.
2. 福本真也.111 弁当箱健康法の原理(サイズと重さはなぜ重要か).ニュートリションケア.18(6),2025,582-6.
3. 福本真也.111 弁当箱健康法の原理(なぜ主食,主菜,副菜を3 等分ずつにするのか).ニュートリションケア.18(7),2025,694-8.
4. 福本真也.111 弁当箱健康法の対象者・非対象者とその応用的使用法.ニュートリションケア.18(8),2025,782-5.
5. 人見麻美子.“栄養指導の実際”.妊婦の糖代謝異常:診療・管理マニュアル.第4 版.日本糖尿病・妊娠学会編.東京,メジカルビュー社,2025,170-3.

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